2015/11/24

漂えども沈まず

Fluctuat nec mergitur
「漂えども沈まず」

先日、フランスに造詣が深いわたしの日本の友人からEメールが届いた。
その文中に書き記されてあった言葉。
これはパリ市の標語、紋章に書かれている言葉である。

この紋章はパリ市の正式な紋章で、このラテン語の言葉はパリ市庁舎にも、そしてパリ市消防団のヘルメットにも記されている。


波の上に堂々と浮いた、帆いっぱいに風を孕んだ船。
王冠の塔の下、ブルボン家の紋章である青地に百合の花。
弧を描く木の枝は右が月桂樹、左が樫。
船の下のリボンの中に記されたラテン語。「漂えども沈まず」

少し歴史を辿ってみる。
紀元前3世紀にはセーヌ河を利用した物資の運搬が盛んで商業が発達していた。
”Parisii”と呼ばれていた紀元前のパリ。そして、ローマのカエサルに征服されリュテシアと呼ばれたローマ時代。その頃にはすでにシテ島を中心に強力な水運組合が結成されていた。 この組合の代表が事実上のパリ市長として機能していた時代があった。セーヌ河を利用した商業になくてはならない舟。
そして驚くことに、パリ市の発祥地シテ島そのものがセーヌ河に浮かぶ舟の形をしている。


パリ市の紋章にラテン語の標語が現れたのは16世紀になってから。そして、1853年11月24日、当時セーヌ県知事だったオスマン男爵が定めた政令により、パリを象徴するエンブレムとして正式な紋章とし、制定された。

特に19世紀には、反乱、クーデタ、また革命を繰り返し、数限りない戦火にさらされ、時にはヒトラーが爆破命令を出したように消滅の危機さえくぐりぬけながら、政治的変転をくぐりぬけて来たパリ。そして今もなお、依然として沈まずにしっかりと存在を示し続けている。

漂えども沈まず。


今日はここまで。
A bientôt!


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