2015/10/16

フランスのエスプリ

17世紀フランスの作家、Jean de la Fontaine(ジャン・ド・ラ・フォンテーヌ)によって書かれた、神話やイソップ寓話をもとにした動物を主人公にした寓話詩「Fables」(1668)というものがある。
寓話は、短い話の中に教訓や風刺を盛りこんだ作品で、17世紀(日本でいうと江戸時代前期)の古語の詩の形で書かれている。行末はすべて韻が踏まれ、言語的な美しさが魅力の読み物。


フランスでは小学校で、みんなこの詩を習って暗記するので、大人になっても覚えている人が多く、今でもフランス人に親しまれている。
ラ・フォンテーヌの寓話の魅力は、イソップを始めとする世界の神話や寓話に、
彼独特のエレガントで超然とした味わいがあることだと思う。
イソップの話には教訓が必ずついているけれど、
ラ・フォンテーヌは教訓をもっともらしく語るのではなく、
ユーモアと風刺をきかせて詩の中に溶け込ませる。

残酷な人間社会を風刺したラ・フォンテーヌの寓話を子供のときから習うから、フランス人は懐疑的で冷たいのだという説があるそうw 懐疑的で冷たいかはおいといても、ラ・フォンテーヌの寓話に子供の時から親しむフランス人には、風刺やシニカルなユーモアがエスプリとして受け継がれているのではないかと感じる。


わたしも読んでみようと、Cyrilのお母さんから本を借りてきた。
古語の文体はわたしにはまだむずかしいのだけれど、ひとつひとつ短い詩なので、
ゆっくりと読んでいこうと思う。
第一話、”La cigale et la fourmi”「セミと蟻」
これは日本でも有名なイソップの「蟻とキリギリス」。
わたしの大好きな部分は、どこかというと、最後の蟻の台詞。
もちろん、「働かざるもの食うべからず。」なんて教訓で締められているのではない。
夏中歌い暮らして蓄えをせず、冬、お腹をすかせて食べ物を乞うセミに向かって
言い放つ蟻の言葉。これが締め。

”Vous chantiez? j'en suis fort aise :
 En bien! dansez maintenant.”
「歌っていたですと?それはまた結構なこと。
 それでは、今度は踊りなさい!」

なんとも意地悪で、そして甘く美しい台詞だと思う。
こういうフランスのエスプリが散りばめられた寓話集。


「セミと蟻」 (訳)
夏の間歌い続けたセミ、
自分が無一文であることに気づいた。
北風が吹いてきたというのに
蝿やミミズの
ひとかけらも残っていない。
セミは隣に住む蟻のところへ行って
空腹を訴えた。
季節が変わるときまで
食いつなぐために
少しの穀物を貸してほしいと頼んだ。
「動物の名誉に誓って、収穫の時期までに
元金と利子をそろえて払うから」と。
蟻は気前が良いわけではない。
それは蟻のもっとも小さな欠点だ。
「暑い間あなたは何をしてたんですか?」と
蟻はこの借り手にたずねた。
「夜も昼も歌っていました。
あなたのお気に召しますまいが・・・」
「歌ってたいたですと?それはまた結構なこと。
それでは、今度は踊りなさい!」


今日はここまで。
A bientôt!


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